NODA MAP 第20回公演『逆鱗』 感想

 

 

NODA MAP 第20回公演『逆鱗』  @北九州芸術劇場 2016/4/2(土)

 

 

 

序盤は人魚を捕まえて「人魚ショー」で一発逆転を狙う水族館と海底の人魚の世界を行き来して、コミカルにストーリーが展開します。

数回不穏なシーンが挿入され、ただの狂騒劇ではないことを示唆し、後半のこの物語の本質へとつながっていきます。

 

 

水族館の警備員サキモリ・オモウ(阿部サダヲ)、自転車でやってくる電報配達人モガリ・サマヨウ(瑛太)、純粋な若者のイルカ・モノノウ(満島真之介)。

水族館の鰯を盗んでいると疑われている鰯ババアこと逆八百比丘尼銀粉蝶)。

水族館館長の鵜飼綱元(池田成志)、館長の娘で人魚研究者の鵜飼ザコ(井上真央)、人魚学者でザコの先生の柿本魚麻呂(野田秀樹)。

 

 

 

野田秀樹お得意の言葉遊びと伏線の回収はもちろんですが、さらに印象的だったのはアンサンブルの表現。

集団が走って舞台上を横切ると魚の群れになり、半透明な円盤を動かすと水の泡になり、天井から振る紙ふぶきは鱗に。

 

舞台上を通り過ぎる集団、魚の群れを使っての演者の退場や場面転換も素晴らしかったです。

 

幻想的な表現ばかりかと思えば、断面がグロテスクな魚の造り物が登場。

なまなましさが良いアクセントになっていました。

 

 

内容としては、時系列の意図的な混乱、戦争というテーマは「エッグ」に通じるものがあります。

前半は笑いや遊びがあるが、後半はその謎が解き明かされ、野田のメッセージに集約していく。

正直、この構成を知っていると楽しみが半減してしまう気はします。

「エッグ」のほうが時系列は複雑で、「逆鱗」は後半が非常にストレートな展開でした。

往年の野田ファンの方たちには物足りない部分がありそう。

 

 

個人的には、舞台後半はぼろぼろと泣いてしまったのですが、

それは知覧特攻平和会館大和ミュージアムで回天の展示を見たときのことを思い出してしまったことが大きな要因になっていて、

純粋に「逆鱗」のみの感動かと考えるとなんとも言えないです…。

 

ただ、舞台演出は非常に好みでした。

 

 

戦争物では戦争へ行く男とそれを悲しみ耐える女、という構図が多い中、唯一の人間の女性のザコが嬉々として兵器を開発し実戦投入をもくろむ姿は新しいですね。

その役を永遠のゼロで主人公の妻を演じた井上真央が演じるのも非常に面白いです。

MIWAを見れなかったので初めて舞台での演技を拝見したのですが、少女マンガのヒロインや大河主人公といったテレビでの印象とは全く違っていてよかったです、

 

 

 

登場人物の名前はすべて役割をもとにつけられていると思うのですが、モノノウは「もののふ」の意味でしょうか。

純粋に祖国や家族のために命を散らした青年兵らの象徴、お国のために勇敢にたたかった武士。

 

 

モガリはの回天作戦の無意味さを暗号として上層部に届けようとしますが、結局その情報が役立つことはなかった。

冒頭でモガリが水族館に届けにきたものの送り先の「上の人」へ渡ることのなかった電報がその暗号。

 

ラストではモガリが隊員の母親に戦死の電報を届けるシーンがあり、ここでやっと電報が誰かに届くことに。

しかし再度自転車に乗って退場していき、まだサマヨウのかなぁと思わせられます。

 

 

前半では笑いを誘うサキモリの人の心が分かるという特殊能力が、後半では緊張感を生むものとなります。

「~だと、誰が言った!」と自分の発言を自分で叱りつけ、部下を殴る。

誰もが馬鹿げた作戦であると感じ、こんなところで死にたくないと思う状況下で出撃する部下から「上官殿はいつも自分たちの心を汲んでくださいます」と言われるシーンでの表情が印象に残っています。

 

 

出撃のシーンで非常に時間が割かれており、一隻一隻の出撃を描いていました。

小さな箱に入った兵士に一人ずつ人魚が付き添い、出撃していく

 

 

 

NINGYOがモガリに言った、「自分はおまえの母だ」「人魚は16才の時に王子と出会う」は矛盾するようで、後半でしっかり伏線が回収されます。

 

「王子」が自分の運命を変える唯一の人という意味なら、たしかに兵士と人魚の関係はそれに当てはまるのでしょう。

 

物語はNINGYOの「どうしても声をあげたくなった。けれど魚は声を出すことが出来ない」というようなモノローグから始まります。

劇中のNINGYOはセリフを水が流れるように読み上げ、それが無機質さを感じさせます。 出撃前の隊員達の心の声も松たか子が透明感のある声で代弁します。

 

しかしラストシーンでは自分を「母さん」と呼び、息絶えたモガリを前に、

悲鳴のような「鳴き声」をあげる。

 

 

 

人魚の世界では母より先に子供が先に死ぬ。そして母が死んだときに人魚は滅亡する。

鰯ババアは人魚(回天)の母であり、死んだ兵士の母でもあります。

 

子は母より先に死ぬ。そして母(戦争を語り継ぐ人)が死んだとき 第二次世界大戦の犠牲者は忘れ去られる(イコール死ぬ)

今回あまりにもストレートな表現で戦争を描いたのは、忘れさせないためではないでしょうか。