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劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK 「乱鶯」感想

 

劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK 「乱鶯」@北九州芸術劇場 2016/5/15(日)

 

www.midareuguisu.com

 

鶯の十三郎(古田新太)は人を殺めず・盗られて困る者からは決して盗まないことを信条とする盗賊。しかし悪事を企む北町奉行所の与力、黒部源四郎(大谷亮介)と通じた子分の裏切りにあい一味は皆殺し、自身も瀕死の傷を負う。

その命を救ったのが幕府目付の小橋貞右衛門(山本亨)と、居酒屋・鶴田屋を営む勘助(粟根まこと)お加代(稲森いずみ)夫婦だった。

 

勘助を病で亡くした後、源三郎と名を変えた十三郎は鶴田屋でお加代を助けて働いていた。そこに現れたのが非道な盗賊・火縄の砂吉(橋本じゅん)を御先手組組頭の小橋勝之助(大東駿介)。

勝之助が自分の命の恩人・貞右衛門の息子であることを知った十三郎は、彼に手柄を立てさせようと手助けすることを決意するが…。

 

 

劇団☆新感線、だいぶ前に見たときとは印象が違う…?と思っていたら、脚本が外の方なんですね。王道な人情もの、新感線にしては超真面目な時代劇といった感想です。

回り舞台をうまく利用して、回転中でも殺陣を魅せていて良かったです。セットの間を小道として使用することで奥行を感じました。 

 

ただ、3時間半近くの公演ということもあり、ストーリーにもう少しひねりが欲しかったです。

登場人物が多く関係も入り組んでいるので個々の葛藤をもっと劇中で描いてほしかったです。ただストーリーが進んでいくだけなので平板に感じられました。

個人的には、幽霊の登場が唐突だったのと、狂言回しと笑い担当なのでしょうが、ストーリー的にも幽霊の存在が必要だったのかいまいち理解できず…。

 

十三郎、序盤の殺陣では若干動きが重たそうに見えたので心配しましたが、後半は軽やかでした。

この殺陣で使用していた槍、穂先がとがっていなかったので銀杏穂槍(甲冑などの堅い物への攻撃を主とする槍)でしょうか。

室内戦を想定した鈍器かと思えば柄に刀が仕込まれていて、抜け目ない盗賊の親分といった雰囲気が出て格好よかったですね。

 効果音、血しぶきや赤の照明で戦闘が表現がされ、迫力があります。後半では血しぶきやライティングがさらに激しく、無辜の商家の人々が膾切りにされる無残さが際立ちます。

 

鶴田屋の客から感じられる市井の人々の生活感がとても良かったです。

十三郎が堅気の人間ではないことを薄々感じながらも気づかぬふりをするのが江戸っ子の心意気というものでしょうか。

盗賊を探す御先手組に対し、「金持ちが盗賊に入られても庶民には関係ない、盗賊の恨みを買うようなことをするもんか」というセリフが特に庶民の感覚を表現していて好きでした。

 

セリフに関していうと、黒部と二人きりになった源三郎が「乱鶯(鶯は本来春に鳴くが、夏にも鳴く季節外れの鶯)」のことを「往生際が悪くていいねぇ」と言うシーンはしびれますね。

  

源三郎として働くようになった鶯の十三郎が7年間堅気の生活をしていたとはいえ調子に乗りやすいキャラになっているのが、「計画を綿密に立てる盗賊の親分」からイメージがかけ離れていて若干違和感でした。

乱鶯になんだかのめり込めなかったのは、主人公の十三郎の心理がよく分からないままストーリーが進行していくところにも一因があったように感じます。

砂吉と勝之助の間で二重スパイのような行動をとることに罪悪感を持たない素振りであったり、

丹下屋でどさくさに紛れて高価な着物をお加世に持ち帰らせようとするところからは

何年経っても性根は盗賊、ということで、たとえ主人公といえども観客には心情や思考があえて分かりづらくしているのかなぁと思いました。

 

ただ、チラシなどで触れられていた十三郎から加世への気持ちはあまり表現されておらず、加世のことをどういう風に好いているのかが結局はっきりしなかったのには釈然としない部分もあります。

心のうちを隠すのがハードボイルド感を出しているとも考えられるのですが、もう少し作中で表現してほしかったです…。

 

後半ですが、丹下屋があっさりと皆殺しにされたのには驚きました。

個人的な予想としては、丹下屋襲撃にはすんでのところで間に合い使用人たちを無事に逃がすことができたものの十三郎が勝之助をかばって死亡。勘助が迎えに来て軽口をたたきあいながら退場、加世の後姿で幕かと予想していました。

序盤では斬り合いに迫力を出していた血しぶきや赤の照明の演出ですが、ここでは罪もない商家の人々が一方的に膾切りにされる無残さを際立たせます。

 やはり、回り舞台を使っての殺陣の見せ方が個人的には好きでした。回転中で観客の目に入るセットの隙間を道として使い、敵を追い詰める形にする。緊迫感がありますね。

 

砂吉との直接対決では十三郎のかつての仕込みが勝敗を分けます。

どんでん返しで辛くも脱出したかと思わせておいて、仏壇から登場して不意をつく…という流れは、序盤のどんでん返し、盗賊が狙いをつけた家に盗み細工を作るという説明など、ちりばめられていた点がここで見事に帰結します。

 

 ラストですが、十三郎が勝之助の死に対して淡泊すぎではないでしょうか。

恩人の息子を死なせてしまったわけなので、もう少し悔やんでもよかったのでは。

また、御先手組の一部には勝之助へ押し込みの決行日を教えたのは十三郎と知られているのに疑いの目は向けられなかったのでしょうか?

ラストシーンで黒部がスイカを持って普通にやってくるのはちょっと謎でした。

結局、源三郎=鶯の十三郎とは気付かなかったということでしょうか?そんな間抜けな人だとも思えないので、なんだかもやっとします。

 

なんにせよ裾をまくりあげた古田新太(脚の太さがかっこいい)、花火の中で対峙する二人の構図が格好良かったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【作】

倉持裕

 

【演出】

いのうえひでのり

 

【出演】

 

古田新太

稲森いずみ大東駿介、清水くるみ

橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと

山本亨、大谷亮介

 

右近健一、河野まさと、逆木圭一郎、村木よし子、インディ高橋、山本カナコ

礒野慎吾、吉田メタル、中谷さとみ、保坂エマ、村木 仁、川原正嗣

武田浩二、藤家 剛、加藤 学、工藤孝裕、井上象策、菊地雄人、南 誉士広、熊倉 功、藤田修平、下川真矢

縄田雄哉、永滝元太郎、関田豊枝、南口奈々絵、金田瀬奈、高嵜百花