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彩の国シェイクスピア・シリーズ第32弾「尺には尺を」感想

蜷川幸雄の遺作となってしまいましたね。

チケットを取った時は予想もしておらず、本当にショックです。

 

内容としては、演出の蜷川っぽさはあり、登場人物はみんな自分勝手でしかも行動に矛盾をはらんでいてとても面白かったです。

 

開演前は舞台上で役者さんたちが稽古をしている、よく見るパターン。舞台裏のようなセットの中で発声練習をしたり思い思いに動いていて、開演と同時に横一列に並び礼、セットが転換し舞台が完成します。

客席を出入りに使ったり、通路を使用したりと、見た目には分かりやすい「蜷川演出っぽい」演出が各所にありました。

ただやっぱりあっと驚く演出はなかったというか、なんだか物足りない気持というか。蜷川幸雄の不在を痛感しました。

 

裁判のところでのスローモーションの演出や砕けた口調のセリフもコミカルで、笑いが絶えませんでした。

 

イザベラ

多部未華子イザベラすごく良かったです。

まず声がとても魅力的。良く響いて聞き取りやすく、テンポも損なわれません。はきはきとした物言いが、弁が立ち合理的な(現金なとも言える)考え方ができる理知的な少女としての印象を強めます。

処女であることに価値があるとしても、代わりに兄の命を投げ出すのは当時の価値観としても不自然ではないものだったのでしょうか?

 

アンジェロ

権力を握った人間が色恋に狂うと自身を律せなくなってしまう…という分かりやすいパターンです。

カーテンを挟んでイザベラと言い争うシーンでは、二人の戦いの火ぶたが切って落とされたこと、カーテンが落とされることで彼の本性が露わになって行動を開始することをあらわしているのかなと思いました。

持参金不足だけを理由に婚約破棄ならまだしも淫らな女と噂を流すのはいただけないですよね。

 

 

ヴィンセンショー

自分の政治の不始末を部下に放り投げ、しかもまるで捨石扱い。さらにその人格を試すように仕向けます。クローディオは生きているのにイザベラには死んだと嘘をついたり自分の悪口を言っていたルーチオを極刑に処そうとするなど、喜劇でなければかなりの問題人物。

パネルで奥行があるように見える舞台から、豪華な衣装を身にまとったがヴィンセンショーが登場するシーンは格好いいですね。

 

 

マリアナ

自分を貶めて捨て、他の女に目移りした男と騙して結婚して、将来は安泰なのでしょうか…?

マリアナは黒い衣装で、イザベラの白い衣装とは対照的。

 

侯爵がイザベラに求婚したところで原作は終わり、その後の展開は読者にゆだねるような形になりますが、

今回の上演では最後にイザベラが普通の娘らしい服に着替え髪も下ろした格好で登場し、鳩を空に放つところで終わります。

これは前半での演出と対照的なので、イザベラが侯爵の求婚を受け入れて修道女になるのを止めたことをあらわすように見えたのですが、飛び立った鳩をイザベラに重ねて侯爵の求婚を受けずに自由に生きることを選択した、というふうに解釈もできます。