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シネマ歌舞伎「野田版 研辰の討たれ」感想

タイトルが「討たれ」だからやっぱり最後は討たれてしまうんですね…。

 

最初の5分から息もつかせぬ辰二の弁舌に圧倒されます。

時事ネタ、メタ的な笑いも取り入れられていたのが面白かったです。でもアドリブ一切なしとのことで、非常に驚きです。

ポスターになっているミュージカルのような写真は一体どんなシーンかと気になっていたのですが、だんまりでした。

 

前半では笑いを誘っていた辰二の町人根性が抜けない見苦しさ、滑稽さがラストの命乞いのシーンでは悲劇的な要素となります。

身の丈に合わない身分を手に入れ価値観の合わない集団に身を置くことになった辰二は、武士たちとのいざこざから殺される結果となってしまいます。

辰二の衣装が迷彩柄なのは、町人から武士になった辰二が武士階級に紛れ込もうとしていることを表しているのか、町人にも武士にもどちらにもなじめなくなってしまったことを表しているのか。

 

 

 

一度は英雄扱いした人間でも瑕を見つけたら即座に手のひらを反してバッシング、自分は責任を持たない位置から「殺せ」と野次を飛ばす群衆。

歌舞伎にしてはかなり多くの人数が群衆役として舞台上に立ち口々にはやし立てる姿は、真っ赤な紅葉と相まって不気味な印象も与えます。

野田秀樹の他の作品にも見られる「無責任な第三者」「集団の暴力性」、そしてそういったものに流されていく悲劇が描かれています。

 

 

「研辰の討たれ」のオリジナルは、大正14年に発表された木村錦花原作、平田兼三郎脚色の戯曲です。

文政十年(一八二七)に讃州丸亀の城下で実際にあった事件を二ヶ月後に二世金沢竜玉によって「敵討高砂松」という題名で芝居になっていたものがもとになっています。事件をきっかけに江戸時代には「研辰もの」が流行って、さまざまな作品が生まれたとのこと。

『日本戯曲全集』に「敵討高砂松」、「研辰の討たれ」は収録されているようなので、読み比べてみたいと思います・

 

 

あらすじ

研ぎ師からおべっかと金で武士の身分を手に入れた守山辰二は、武士の心得を知らず、朋輩達の反感を買い笑い者にされています。

目をかけてくれる奥方の前で市郎右衛門に手合わせを挑みんで散々にやられたことを恨み、町人仲間に依頼して作ったからくり人形で一泡吹かせようと画策する。

しかし、市郎右衛門はそのからくり人形驚いて突然死してしまう。不名誉な死に方を隠すために部下は「辰二に殺されたのだ、かたき討ちをしなさい」と息子九市郎と才次郎を焚き付ける。

逃げた辰二は各地を逃げ回るものの、旅籠で宿代を払えなくなってしまう。とっさに自分は敵討ちのため諸国をまわっているのだと嘘をつくと町人たちから英雄扱いされる。調子に乗っているところに市郎右衛門の息子二人が到着し、嘘が露見すると町人たちは掌を返して二人に辰二を殺せとはやし立てる…。