「BENT」感想

2016/8/16@福岡市民会館

 

「BL」とか「エアーセックス」という単語で話題になっていましたが、そういったセンセーショナルな単語を刷り込まれて観ると印象が引きずられてしまって楽しさが半減してしまいますね。

人間の尊厳の物語です。

 

シンプルな舞台セットと洗練された演出で、ストーリーに引き込まれます。

BGMはほぼ無しでした。

虫の羽音や風の音、照明と背景で夏の暑さや厳しい冬の寒さなどが表現されます。

 

1幕ではマックスとルディが同棲する部屋、グレタの控え室、公園、森のキャンプ場、護送列車とセットが転換します。

観葉植物やソファーがある雑然とした部屋から、徐々に物がなくなって行くのが強制収容所へと近づいていく暗示なのでしょうか。

2幕では一度も変わらず、背景や照明で季節の移り変わりが表現されます。

いくつかの段差があるセットの上で、ラストまでほとんどマックスとホルストが二人だけで石運びを続けるだけです。

一見単調ですが、このセットの変化のなさや二人の会話だけで展開していくことで、二人の受ける石運びの拷問のつらさ、ホルストの衰弱、そして二人の精神的な歩み寄りが浮き彫りになります。

 

登場人物の流れるような、畳みかけるような会話が非常に心地よかったです。

それとは打って変わって静かで緊迫した空気のなか進むラストの場面。自分には死しか待ち受けていないと理解しているホルストがどう行動するのか、あれほど固唾をのんで見守ったことはないのではないかと思うほど。

そしてその後、マックスがどう行動するのか最後まで予測できませんでした。単純に電気柵に向かって終りかと思っていたので、いい意味で裏切られました。

 

マックスは「ルディと一緒にいるのは責任感からだ」と主張し、ホルストから愛を告白されても「自分は人を愛せない」と拒絶します。

しかし、最後にホルストの遺体を抱きながら、自分はルディを愛していたことやホルストへの想いを吐露します。

マックスはこれまで自分の本心を自覚しないようにしていただけで、これまで自分が本心から逃げていたのではないかと思います。

最終的に自殺を選んだのは、ここで「黄色い星」のまま生きながらえることを自分の心が許さなかったからではないかと思いました。

 

 

作:マーティン・シャーマン

翻訳:徐賀世子

演出:森新太郎

出演:佐々木蔵之介 北村有起哉 新納慎也 中島 歩

小柳 友 石井英明 三輪 学 駒井健介 / 藤木 孝

 

 

 

余談ですが、BENTを観た後、「ピンク・トライアングルの男たち」という本を読みました。

ピンクの三角をつけられながらも生き残った男性の記録です。

ところで、BENTでもこの本でもあまり描かれなかったのですが、収容所には同性愛者の男性だけでなく同性愛者の女性も収容され、凄惨な扱いをうけていたそうです。

女性は「妊娠させれば改心する」と考えられ、望まない妊娠を強いられた方も多いようです。同性愛者の女性が受けた被害の資料が残っていないのはそのせいとも言われており、決して男性よりいい扱いを受けていたわけではないとのことでした。 

 

 

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